ホワイトラビット/伊坂幸太郎
本屋さんで文庫になっている未読の伊坂さんの本を探していたら出会いました。
ワクワクしながらいざ読書!
今回もネタバレしないように、感想を。
ホワイトラビット/伊坂幸太郎 あらすじ
誘拐をビジネスとしているグループで調達を担当している、兎田孝則。
誘拐された、兎田の新妻綿子ちゃん。
自宅で拳銃を突きつけられながら、秘密を抱える母と息子。
オリオン座のうんちくを語りたがる、コンサルタントのオリオオリオ。
困った展開に遭遇する、泥棒の黒澤。
立てこもり事件の対応を指揮する、交通事故で妻娘を亡くした夏之目課長。
誘拐と、立てこもりと、交通事故。
それぞれが、それぞれの立場で、必死に動いた結果、ややこしくなる白兎事件。
この物語はどう繋がって、どんな終着点が待っているんだろう、、?
ホワイトラビット/伊坂幸太郎 感想
物語が展開する場所ごとに時差があり、その時差によって騙されました。
例えば、
・立てこもり犯が母と息子に銃を突きつけている、その家の中
・泥棒の黒澤が空き巣に入った詐欺師の家と、その隣の家
・立てこもり事件の捜査を指揮する夏之目がいる捜査車両
いろんな場所と時間を行ったり来たりしながら、それでも混乱することなく、事件に巻き込まれていく感覚。
点と点だった話が、最後に向かってどんどん繋がっていって、全体像が浮き上がってくるのが楽しい。
星座みたい、とも言える。
帯に「全ページ伏線!?」って書いてあったから心して読んだけど、それでも鮮やかに全てがつながっていくのが本当に綺麗で、心を掴まれました。
あと、ちょくちょく読者に話しかけてくる「天の声」みたいなのが面白くて。
「〜と呆れる方もいるだろう」
「〜という声もあるかもしれない」
「〜は忘れないでもらいたい」
って話しかけてくるから、親しみが湧きました。笑
ホワイトラビット/伊坂幸太郎 印象的な場面
いっぱいあるけど、一つだけ挙げると、夏之目さんと娘の会話が印象に残ってる。
物語の本筋というよりは装飾の部分。
「あれか、宇宙の歴史に比べれば、俺たちは塵のような」
「それもまたいいよね。轟々とすごい速さで流れていく時間の中で、そのほんの一瞬の間でわたしたちは生きて、一喜一憂したり、遊んだり、勉強したり、働いたり、恋愛したりするんでしょ。凝縮されているというか。充実しているというか。(以下略)」
まだ娘が生きていた時の幸せなやりとり。
「はい、生まれました。はい、死にました。みたいなものじゃないか」
「違うよ。はい、生まれました。はい、いろいろありました。はい、死にました」
その「いろいろ」の中に、本当に「いろいろ」が含まれているんだよなあ。
楽しいことも、しんどいことも。
ちょっと自分の人生を顧みたりもして。
宇宙の歴史に比べれば云々〜ってよく耳にするような気もするけど、それでも、やっぱり立ち止まって耳を傾けちゃう言葉だなって思いました。
私の生きている今は、「はい、生まれました」から「はい、死にました」の間の「はい、いろいろありました」の部分なんだなって。
物語の本筋とはあまり関係ないところで「ほーん」ってなりました。
ホワイトラビット/伊坂幸太郎 まとめ
登場人物にクセがあって、語りに踊らされて、全然先が見えないけど、伏線全部回収してくれるはずと信じて読み進め、見事に終着点にたどり着いてくれるお話でした。
楽しい読書体験、ありがとうございました!