夢違/恩田陸
母が図書館で借りてきた本。
恩田さんの本は『蜜蜂と遠雷』くらいしかちゃんと読んだことなかったので、興味があって私も読ませてもらいました!
夢違/恩田陸 あらすじ
「『夢札』を引く」という行為によって、夢を記録し、映像として可視化出るようになった世界のお話。
夢札を医療分野で活用するようになった日本には、新たに「夢判断」という国家資格が登場する。
夢判断を生業としている野田浩章。
そして、予知夢を見ることができた古藤結衣子。
ある時から浩章は、亡くなったはずの古藤結衣子の存在を、さまざまな場所で感じるようになる。
同時期に、「小学生の子供たちが集団で白昼夢を見たらしい」という奇妙な事件が起きる。
次々に起こる不可思議な出来事に関わ流ことになる浩章。
夢が可視化され、現実と夢の境目は曖昧になっていく。
そして、濃くなっていく古藤結衣子の存在感。
世界は、これからどうなってしまうのだろう。
夢違/恩田陸 感想
読み終わってからも不思議な世界の余韻が抜けない感覚になりました。
この後、世界はどうなってしまうんだろう。
どんな世界になってしまったのだろう。
少なくとも、今まで私が認識していた世界とは違う世界になってしまったんだ、という感覚。
私は夢をすぐに忘れてしまうタイプなのだけれど、もしも夢を記録し見ることができるようになったら、どうなるだろうと想像せずにはいられません。
夢札を医療分野に利用したり、若い女性向けのビジネスとしてリラクゼーション系のエステなどと関連づけて成立させようとしたりするくだりは、もしも夢の可視化が現実にできたとしたら、すごくあり得そうなことだなと思いました。
直前に読んでいた伊坂幸太郎さんの本がファンタジーながらも全部の伏線を回収していくスタイルだったのに対して、恩田さんの『夢違』は隙間というか余白がたくさん残されていました。
読み終わってから、あれはどうなったんだろう、これはどうするんだろう。あの人は?あの子は?と想像する余地があるのもまた違った楽しみですよね!
夢違/恩田陸 印象に残ったシーン
夢の中でドビュッシーの「亜麻色の髪の乙女」が流れているというが印象的でした。
最初は他愛のない、いつもの夢から始まるの。
野原で楽しく遊んでたりして、そんな気配は全然ないの。夢中になってシロツメクサの冠なんか作ってるのね。でもね、そのうち、「亜麻色の髪の乙女」が流れてくるの。
ドビュッシーの曲って幻想的というか、色がキラキラほわほわと漂っているようなイメージがあって。
だから、夢の中で決まって亜麻色の髪の乙女が流れるというのはすごく「夢の中」な感じがして。
でも、曲は穏やかなままではなくて。
やがて「とだえたセレナード」に変わり、「沈める寺」になる。
その音楽の変化と、古藤結衣子の見ていた予知夢がすごくリンクして。
嫌な内容なのに、最後まで見ることが避けられない。
穏やかだったはずなのに、不穏な空気が漂ってきて、どうしようもない嫌な夢を見る。
そこにドビュッシーの音楽が流れているのが、とてもしっくりくる。
夢違いをこれから読む人は、あらかじめこの3曲を聴いているとより面白いかもしれないなあと思いました。
・亜麻色の髪の乙女
・とだえたセレナード
・沈める寺
夢違/恩田陸 まとめ
夢と現実がダブって見えてくるような、不思議なお話でした。
物語の中に音楽が流れているのも素敵。
恩田さんありがとうございました!