diary

本を読んだり、お散歩したり、ごはん食べたり。

村上海賊の娘 上巻/和田竜

村上海賊の娘 上巻/和田竜


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母が借りてきてくれたものを拝借して読みました。

今まで何度も見かけていたものの、歴史物かあ…と、何となく敬遠していました。

難しい言葉多いんだよな、、と。

 

しかしながら、思い切って読んでみて良かったです!

 

戦国無双5で信長が活躍する近辺の時代に何となく親近感を持っていたのも良かったのかも。笑

 

ネタバレしないように感想を。

村上海賊の娘 上巻/和田竜 あらすじ

舞台は戦国時代。

 

織田方と対立する本願寺は、三方を織田方の砦に囲われ、兵糧の供給が困難なことから飢えに苦しんでいた。

 

本願寺からの兵糧の供給要請を受けた毛利家は、兵糧を供給して本願寺方に味方するか、織田に睨まれないよう要請を断るかで揺れる。

 

膨大な兵糧を供給するには、唯一残された海路を運ぶしかない。

膨大な兵糧を供給するには、村上海賊の協力が不可欠だ。

 

そこで、瀬戸内の島々を領地として活躍していた村上海賊を頼ることにする。

 

女であるにも関わらず戦に憧れ、海賊働きを楽しみ、醜女と評判の景。 

父であり、村上海賊の頂点に君臨する武吉。

兄であり、景の海賊働きを叱り続ける生真面目な元吉。

弟であり、ことあるごとに景に振り前わされる臆病な景親。

 

海で出会った本願寺の門徒たち。

向かった先で出会った豪快な泉州の海賊たち。

思惑に揺れる人々。

 

それぞれの思惑の行き着く先は?

戦に憧れる景は戦場に何を見る?

 

村上海賊の娘 上巻/和田竜 感想

題名から、村上海賊の娘にフォーカスして物語が進むのかなと思っていたけれど、想像していた感じとは違いました。

物語の設定上、本願寺や毛利家、泉州海賊、村上海賊等、それぞれ立場の人々についての描写も多かったです。

 

書き方も、入り込みすぎず引いたところから書いていて、映画みたいだなあと。

誰か一人に思い入れしすぎないで、それぞれの人物の立場から一つの出来事を見ることができたから、とっても面白かったです!

すごいボリュームだから難しいかもしれないけど、映画になったら嬉しいな〜と思いました。

 

村上海賊の娘 上巻/和田竜 印象的な場面

夜這いに来た男たちを追い払った後の七五三兵衛と景のやりとり。

 

「お前は行かないのか」

「行けへんな」

七五三兵衛はそう言うと、ひと息ついて真顔になった。次いで、顔を寄せ、

「わしは心肝を盗りに来たさかい」

「ん?」

景は言葉の意味がわからず、変な顔をした。その目をじっと見詰めて七五三兵衛は繰り返す。

「心を盗りに来たんやしよ」

寝込みを襲うわけでもなければ、拝み倒すわけでもなく、女の心を心を奪いにきたということか。ガサツなこの男にはまるで不似合いな回りくどさであった。

 

地元では醜女と評判の景を、「べっぴん」で「面白い」と気に入っている七五三兵衛のアプローチの仕方が、それまでの言動の豪快さとギャップがあって好きだなあと思いました。

 

このあと色々あるからこそ、この時の二人のやりとりがすごく愛しいというか切ないというか、大事に思える。

 

上巻を読んだ時点でも好きなシーンだったけど、下巻まで読むとさらにこのやりとりが大切に思える。

とっても素敵な場面だと思いました。

 

村上海賊の娘 上巻/和田竜 まとめ

戦国時代を舞台にした話ってとっつきづらそう、、と先入観を持っていたけど、読んで良かったです。

食わず嫌いしないで読んでみるの大事だなあと思いました。

 

和田さんありがとうございました!

 

村上海賊の娘 上/和田竜

キャプテンサンダーボルト/阿部和重・伊坂幸太郎

キャプテンサンダーボルト/阿部和重・伊坂幸太郎


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ハードカバーの時からずっと気になっていた本。

タイトルからして面白そうだし、二人で描くってどんな感じなんだろうってわくわく。

文庫本になっているのを発見したので、手に取りました♪

 

キャプテンサンダーボルト/阿部和重・伊坂幸太郎 あらすじ

かっこつけてしまったがために、借金を抱えることになった相葉時之。

さらに、謎の「水」に関する取引の現場に居合わせたことで、怪しい男に狙われることとなる。

 

息子の通院による治療費が嵩み、借金の返済に追われる井ノ原悠。

少しでも多くの金を入手するため、ある副業をしていた。

 

相葉と井ノ原はかつて同じ小学校、野球チームで一緒に過ごした同級生だった。

同時に、「鳴神戦隊サンダーボルト」の大ファンでもあった。

 

父の死の真相を追う、桃沢瞳。

 

殺すことを厭わない銀髪の外国人、メンター。

 

致死率の高い感染症である「村上病」と国民に課せられた予防接種。

東京大空襲の最中、東北の山中に墜落したB29。

そして、五色沼の水。

 

全てがつながり、明らかになる真実とは、、?

 

キャプテンサンダーボルト/阿部和重・伊坂幸太郎 感想

相葉と、相葉に振り回される井ノ原。

全ては、相葉からの「金ほしくねえか?」の誘いに乗ってしまったから。

でも、二人の相性は、抜群だった。

 

子供の頃濃い時間を一緒に過ごした相棒は、時間を経て大人になっても良い相棒だった。

直感に従って行動する相葉と、落ち着いて対処する井ノ原。

ちょっと羨ましくなるくらい、意思の疎通ができていて。

 

ピンチであればあるほど、二人の連携が際立つ。

 

二人の冒険(?)の他にも見所がいっぱいあって。

 

個人的にはメンターの圧倒的な強さに絶望しました。

もうこんなの、倒すの無理だよ。絶対無理だよ。

だって強すぎるもん。殺すのにも躊躇なさすぎるもん。

どうすんのよ相葉。こんな怪物に目つけられちゃって。

 

でも、絶対に二人でなんとかしてくれると信じて読み進めました。笑

 

テンポよくどんどん進むのに、謎がが次第に深まって。

何がどう関連しているのか、この先にどんな結末が待っているのか、想像しながら読み進めるのがすごく楽しかったです。

 

キャプテンサンダーボルト/阿部和重・伊坂幸太郎 印象的な場面

夜の山の中で、二人が必死に目的地を目指して歩いている時の会話。

「おい、井ノ原、俺の判断は間違ってるってのか?」

「そんなことは言ってないだろ」

「どうして、俺はいつも、間違ってるほうを選んじまうんだよ」

「なんだって?」

「俺だってな、間違えたくて間違えてるわけじゃねえんだ」

「相葉、落ち着け。いったい何の話なんだ」

「気がついたら、こんなありさまになっちまってんだよ。俺が何したってんだ」

 

今だって間違っているかもしれない。

不安や焦りから、自分の人生間違ってばかりだという思いが抑えきれずに爆発してしまう。

そりゃ、こんな事態に巻き込まれて平静じゃいられないよね、と思う。

 

相葉に応じる井ノ原の言葉も合わせて、この場面は印象に残ってる。

 

「落ち着け、相葉。いいか、誰だって完璧な判断なんてできるわけないんだ」井ノ原悠は自分に言い聞かせているようなものだった。気がついたら我が人生、こんなありさまになっていた、とは井ノ原悠の嘆きとも重なる。

 

大人になって、かつての自分が今の自分を見たらがっかりするに違いないと思うような

現状になっていて。

自分や周りのために、最善の選択をしてきたはずなのに、どこで間違ってしまったんだろう。何がいけなかったんだろう。気づいたらこんなありさまだ。という嘆き。

 

それでも、やっぱり、最善を尽くす。

今の自分たちにできることを。

 

このやりとりを経てもう一度前に進んいく二人が頼もしくて、嬉しかったなあ。

 

キャプテンサンダーボルト/阿部和重・伊坂幸太郎 まとめ

あちこちに散らばった端切れが新たな謎を呼び、その謎を追って新たな真実が明らかになり、全てのピースが揃った時に、真実が明らかになる。

その過程と、登場人物たちのやりとりがとっても面白かったです!

 

最後に収録されていた阿部さんと伊坂さんの対談も、読めてよかった♪

 

阿部さん、伊坂さん、ありがとうございました!

 

キャプテンサンダーボルト/阿部和重・伊坂幸太郎

夢違/恩田陸

夢違/恩田陸


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母が図書館で借りてきた本。

恩田さんの本は『蜜蜂と遠雷』くらいしかちゃんと読んだことなかったので、興味があって私も読ませてもらいました!

 

夢違/恩田陸 あらすじ

「『夢札』を引く」という行為によって、夢を記録し、映像として可視化出るようになった世界のお話。

夢札を医療分野で活用するようになった日本には、新たに「夢判断」という国家資格が登場する。

 

夢判断を生業としている野田浩章。

そして、予知夢を見ることができた古藤結衣子。

 

ある時から浩章は、亡くなったはずの古藤結衣子の存在を、さまざまな場所で感じるようになる。

 

同時期に、「小学生の子供たちが集団で白昼夢を見たらしい」という奇妙な事件が起きる。

 

次々に起こる不可思議な出来事に関わ流ことになる浩章。

夢が可視化され、現実と夢の境目は曖昧になっていく。

そして、濃くなっていく古藤結衣子の存在感。

 

世界は、これからどうなってしまうのだろう。

 

夢違/恩田陸 感想

読み終わってからも不思議な世界の余韻が抜けない感覚になりました。

この後、世界はどうなってしまうんだろう。

どんな世界になってしまったのだろう。

少なくとも、今まで私が認識していた世界とは違う世界になってしまったんだ、という感覚。

 

私は夢をすぐに忘れてしまうタイプなのだけれど、もしも夢を記録し見ることができるようになったら、どうなるだろうと想像せずにはいられません。

 

 

夢札を医療分野に利用したり、若い女性向けのビジネスとしてリラクゼーション系のエステなどと関連づけて成立させようとしたりするくだりは、もしも夢の可視化が現実にできたとしたら、すごくあり得そうなことだなと思いました。

 

直前に読んでいた伊坂幸太郎さんの本がファンタジーながらも全部の伏線を回収していくスタイルだったのに対して、恩田さんの『夢違』は隙間というか余白がたくさん残されていました。

読み終わってから、あれはどうなったんだろう、これはどうするんだろう。あの人は?あの子は?と想像する余地があるのもまた違った楽しみですよね!

 

夢違/恩田陸 印象に残ったシーン

夢の中でドビュッシーの「亜麻色の髪の乙女」が流れているというが印象的でした。

 

最初は他愛のない、いつもの夢から始まるの。

野原で楽しく遊んでたりして、そんな気配は全然ないの。夢中になってシロツメクサの冠なんか作ってるのね。でもね、そのうち、「亜麻色の髪の乙女」が流れてくるの。

 

ドビュッシーの曲って幻想的というか、色がキラキラほわほわと漂っているようなイメージがあって。

だから、夢の中で決まって亜麻色の髪の乙女が流れるというのはすごく「夢の中」な感じがして。

 

でも、曲は穏やかなままではなくて。

やがて「とだえたセレナード」に変わり、「沈める寺」になる。

 

その音楽の変化と、古藤結衣子の見ていた予知夢がすごくリンクして。

嫌な内容なのに、最後まで見ることが避けられない。

穏やかだったはずなのに、不穏な空気が漂ってきて、どうしようもない嫌な夢を見る。

 

そこにドビュッシーの音楽が流れているのが、とてもしっくりくる。

夢違いをこれから読む人は、あらかじめこの3曲を聴いているとより面白いかもしれないなあと思いました。

 

・亜麻色の髪の乙女

www.youtube.com

 

・とだえたセレナード

www.youtube.com

 

・沈める寺

www.youtube.com

 

夢違/恩田陸 まとめ

夢と現実がダブって見えてくるような、不思議なお話でした。

物語の中に音楽が流れているのも素敵。

恩田さんありがとうございました!

 

夢違/恩田陸

ホワイトラビット/伊坂幸太郎

ホワイトラビット/伊坂幸太郎


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本屋さんで文庫になっている未読の伊坂さんの本を探していたら出会いました。

ワクワクしながらいざ読書!

 

今回もネタバレしないように、感想を。

ホワイトラビット/伊坂幸太郎 あらすじ

誘拐をビジネスとしているグループで調達を担当している、兎田孝則。

誘拐された、兎田の新妻綿子ちゃん。

自宅で拳銃を突きつけられながら、秘密を抱える母と息子。

オリオン座のうんちくを語りたがる、コンサルタントのオリオオリオ。

困った展開に遭遇する、泥棒の黒澤。

立てこもり事件の対応を指揮する、交通事故で妻娘を亡くした夏之目課長。

 

誘拐と、立てこもりと、交通事故。

それぞれが、それぞれの立場で、必死に動いた結果、ややこしくなる白兎事件。

 

この物語はどう繋がって、どんな終着点が待っているんだろう、、?

 

ホワイトラビット/伊坂幸太郎 感想

物語が展開する場所ごとに時差があり、その時差によって騙されました。

 

例えば、

・立てこもり犯が母と息子に銃を突きつけている、その家の中

・泥棒の黒澤が空き巣に入った詐欺師の家と、その隣の家

・立てこもり事件の捜査を指揮する夏之目がいる捜査車両

 

いろんな場所と時間を行ったり来たりしながら、それでも混乱することなく、事件に巻き込まれていく感覚。

 

点と点だった話が、最後に向かってどんどん繋がっていって、全体像が浮き上がってくるのが楽しい。

星座みたい、とも言える。

 

帯に「全ページ伏線!?」って書いてあったから心して読んだけど、それでも鮮やかに全てがつながっていくのが本当に綺麗で、心を掴まれました。

 

あと、ちょくちょく読者に話しかけてくる「天の声」みたいなのが面白くて。

「〜と呆れる方もいるだろう」

「〜という声もあるかもしれない」

「〜は忘れないでもらいたい」

って話しかけてくるから、親しみが湧きました。笑

 

ホワイトラビット/伊坂幸太郎 印象的な場面

いっぱいあるけど、一つだけ挙げると、夏之目さんと娘の会話が印象に残ってる。

物語の本筋というよりは装飾の部分。

 

「あれか、宇宙の歴史に比べれば、俺たちは塵のような」

「それもまたいいよね。轟々とすごい速さで流れていく時間の中で、そのほんの一瞬の間でわたしたちは生きて、一喜一憂したり、遊んだり、勉強したり、働いたり、恋愛したりするんでしょ。凝縮されているというか。充実しているというか。(以下略)」

 

 

まだ娘が生きていた時の幸せなやりとり。

 

「はい、生まれました。はい、死にました。みたいなものじゃないか」

「違うよ。はい、生まれました。はい、いろいろありました。はい、死にました」

 

 

その「いろいろ」の中に、本当に「いろいろ」が含まれているんだよなあ。

楽しいことも、しんどいことも。

ちょっと自分の人生を顧みたりもして。

 

宇宙の歴史に比べれば云々〜ってよく耳にするような気もするけど、それでも、やっぱり立ち止まって耳を傾けちゃう言葉だなって思いました。

 

私の生きている今は、「はい、生まれました」から「はい、死にました」の間の「はい、いろいろありました」の部分なんだなって。

物語の本筋とはあまり関係ないところで「ほーん」ってなりました。

 

ホワイトラビット/伊坂幸太郎 まとめ

登場人物にクセがあって、語りに踊らされて、全然先が見えないけど、伏線全部回収してくれるはずと信じて読み進め、見事に終着点にたどり着いてくれるお話でした。

楽しい読書体験、ありがとうございました!

 

ホワイトラビット/伊坂幸太郎

フーガはユーガ/伊坂幸太郎

フーガはユーガ/伊坂幸太郎


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読書の夏!ということで、ここ最近全然読んでいなかった小説を貪るように読んでいます。

 

いろんなことをすぐ忘れちゃうから、ログを残しておこうかなと思いたちました。

ネタバレしないように、感想を。

 

フーガはユーガ/伊坂幸太郎のあらすじ

双子の優我と風我。

ある日気づいた、不思議な現象。

誕生日にだけ、2時間おきに起きる、二人だけの特別な「アレ」。

 

誕生日に「アレ」が起きること以外は、至って普通の、とはいえ暴力的な父親がいるから家庭環境的には一般的に普通とされる環境とは程遠いのだけれど、兄弟の話。

 

フーガはユーガ/伊坂幸太郎の感想

優我によって語られる、幼い時から今までの物語が、線になって繋がって最後にくっきりと輪郭を表すのが面白い。

 

伊坂さんの作品には不思議な力が持っている人たちがよく出てくるけど、今回も、そう。

でも、不思議な力があっても、父親には暴力で支配されるし、家は居心地が悪いままだし、不死身なわけではない。

むしろその不思議な力のせいで余計な心配事が増えているとも言える。

 

だけど、二人は手強い。

一人じゃないって心強い。

しかもそれが年の差がある兄弟ではなく、双子なのがよい。

 

風我が高校卒業後に就職することを選んだ時、心配した高校の先生に

 

「俺たち二人で一人前、という形でやっていくんで」

 

って言ってるところが印象に残ってる。

 

先生が

 

「僕たち音楽ユニットを組むことにしたんで、みたいな言い方をするなよ」

 

って返すところまで含めて好き。笑

 

私たちは、自分の人生以外を生きることはできないけれど、優我と風我はそれぞれ別の道を歩んでも、それを自分自身の人生として捉えることができるのか。

それはすっごくお得だな。ってちょっと羨ましくもなったり。

 

時間の流れが過去から現在に移行してから最後の方は、展開が面白くてページをめくる手が止まらず。

 

なんというか、ギアが1段上がるというか。

今までの出来事や事件がつながり始めて、伏線をガーって回収しながら加速する感じがたまらない。

 

楽しい読書体験でした。

伊坂さんありがとうございました!

 

フーガはユーガ/伊坂幸太郎